ことば少年
- こもれびスタッフ
- 2019年4月26日
- 読了時間: 4分
こんにちは。
語学塾こもれび、フランス語塾生の秋本です。
先日電車に乗って座席に座っていたところ、隣に親子連れがやってきました。お母さんと、小学校低学年と思しき男の子。お母さんが席に座り、男の子はお母さんの前に立ちました。
聞こうと思ったわけでなかったのですが、二人の会話が耳に入ってきます。
「僕が問題を出すから、お母さんはそれがどういう意味か答えてね」
「はいはい」
「え~っとじゃぁ…『布団が吹っ飛んだ』!」
「『布団』と『吹っ飛ぶ』がかかってるってことね」
「そう!じゃぁ、『ダジャレを言うのは誰じゃ』!」
「『ダジャレ』と『誰じゃ』ね」
そう、男の子はダジャレを楽しそうに言い始めたのです。
このやりとりはしばらく続いたのですが、お母さんがやや飽きてしまったのか、やがて終わってしまいました。
すると今度は、男の子はこう言います。
「しりとりしよう!」
おぉなるほど、次はしりとりですか…と思っていると、次のセリフは意外なものでした。
「日本語がいい?英語がいい?」
日本語も英語も、どちらでもいけるというのです。
そして、お母さんによって選ばれたのは英語。初めて耳にする、英語しりとりが始まりました。
「snake」→「elephant」→「tiger」→「rainbow」…
おぉ、たしかにしりとりです。しかも、男の子もお母さんも発音が綺麗。
そのうちルールが変わり、2人で次に続く単語を考え始めました。「2人で考えればいいから、ずっと続けられるね!」と笑う男の子の楽しそうな顔が印象的です。
※余談ですが、「k」で始まる単語を言わなくてはいけないとき、「cake!」「それはc」、「cola!」「それもc」、「cool!」それもc」…と、「c地獄」に嵌ってしまっていたのがなんとも面白かったです。
さて、僕はこのやりとりを眺めながら、「この男の子は『ことば少年』だな~」と考えていました。
「ことば少年」。彼の中ではおそらく、日本語も英語も等価で、どちらも「楽しいもの」なのでしょう。そのような境地に至ったのが生まれ持ったものなのか、教育によるものかは分かりません。いずれにせよ彼を見ていると、心の底から「ことば」を楽しんでいる様子がありありと伝わってきて、僕はとても幸せな気持ちになったのでした。
※ ※ ※
そうは言っても、彼のように「ことばはとにかく楽しいもの」と感じられる人は必ずしも多くはないかもしれません。特にそれが英語となると、学生時代に散々苦しめられた思い出が蘇ってきて、拒絶反応が顕れてしまう方もいることと思います(ちなみに、「数学はことば」と考えるならば、僕は英語には苦しめられなかったのですが数学(そして算数)には苦しめられた人間で、その苦手意識は今でも克服できていません…)。
しかし、このご時世、ビジネスマンを例にとってみても「英語力(と会計力(≒算数?))は必須能力」などとまことしやかに囁かれています。そうすると、それらのことばに親しむことができない人たちは困り果ててしまいますね。
これからの時代を生き抜くには、否が応でもそれらのことばを血の滲む思いで勉強し、たとえわずかながらでも身に付けるしか道はないのでしょうか。もしくは、のらりくらりとかわしつつ、なんとかやっていく道があるのでしょうか。
残念ながら僕はその答えを持ち合わせていませんが、個人的な感覚で申し上げるならば「もしほんの少しでも身に付けないとやっていけない場面に直面してしまったら、なんとか自分に合った勉強方法を発見して、『イロハのイ』だけでもものにする」というのが自分には合っているように感じます。
僕の例で言うならば、苦手でたまらない数学や算数ですが、数年前から仕事の行きがかり上、簡単な算数程度のことを実践しなくてはいけない状況にあります。はてさて困った…というところなのですが、「いつまでも拒否し続けていても何も解決しない」と一念発起し、亀のようなのろさですがわずかずつ前進を続けています。
最近、「速さと遅さ」ということについて考える機会がありました。同じことをするにしても、速いスピードでどんどん進む人もいれば、自分なりのペースで一歩ずつ進む人もいます。(僕がよく用いる表現ですが)どちらが良い/悪いということではなく、「みんな違ってみんな良い」だと思うのです。
その意味で、(自己肯定をするようですが)僕は僕のスピードで進んでいくしか方法はありません。速いスピードを真似しようと思っても、できませんから。それぞれが自分に見合った速度で事をなしていけるのが理想です。
※ ※ ※
さて、明日4月27日(土)の14時~16時は、2ヶ月に一度のイベント「こもれびより」です。今回のテーマは「日本人と英語」。それこそ、ご参加いただく方の中には、速いスピードの人と自分なりのスピードの人、そのどちらもがいらっしゃることと思います。
それぞれがお互いの思いを話すことで、何か新たな気づきがあるかもしれません。
明日は、そんな場になれば良いな、と思う塾生の秋本であります。
お越しくださる方々、お会いできるのを楽しみにしております。
秋本 佑
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