モロッコ便り01 ~ 2杯のスープ
- 2019年4月8日
- 読了時間: 4分
こんにちは、塚本です。
3月にはこもれびの皆さんに盛大に送り出していただいて、4月4日に日本を旅立ちました。おかげさまで、今はモロッコで元気にしています。
これからはモロッコから不定期でブログを書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします!
さて、モロッコに来てから4日が経ちました。語学学校の寮に入るまでのしばらくの間、安宿に泊まっています。
宿暮らしのため、昼と夜は外のレストランでご飯を食べていまして、モロッコの食事は私好みの味で、とても美味しいです。
最初のうちはどこに何があるのかわからなくて、パニーニやらサンドイッチやら、特にモロッコ感のない食事をとっていましたが、昨日、今日と、地元の人たちがたくさんいる食堂に行くことができました。
昨日はモロッコ料理の代名詞ともいえる、タジンを食べました。
煮込む具材は羊肉、牛肉、魚、ミートボールなど様々ありますが、これは野菜とチキンが煮込んであるタジンです。これで30ディルハム、およそ350円。

そして、今日は同じ通りに並ぶ別のお店に行きました。ここでもタジンを注文しようとしたのですが、あいにく無くなってしまったとのことで、スープを頼みました。
すると、お店の人が「スープ ジュージュ」と言ったので、「ジュージュっていう名前のスープなのかな」と思いながら席で待つこと数分…。
なんとスープが2つ運ばれてきました。
確かに私は注文する時に数をきちんと言っておらず、当たり前のように1人だから1つというつもりで待っていたのですが、もしかして、モロッコの人たちは1回の食事にスープを2杯飲むのが当たり前なのでしょうか…
でも、周りを少し見渡しても、スープを食べている人たちは1杯しか飲んでいない…
「え、2つとも私の?」とお店の人に尋ねると、そうだよと言われたので、仕方ないと腹をくくり、食べきれるだろうかという不安を抱えながら食べ始めました。

大通りに面した食堂だと、食べながら街ゆく人たちを観察するのが楽しみでもあります。
バスの窓から身を半分ほど乗り出している少年がいたり、道を渡る途中の車道の真ん中で靴ひもを結び直そうとする青年がいたり。横断歩道も信号もないところから歩行者が道を渡ろうとしても、車と息がぴったりでお互いにスピードを変えることなく行き交う様子は見ていて全く飽きません。(ちなみに、私はというと、タイミングを見計らって渡ろうとしてもクラクションを鳴らされたり、怖がって小走りで駆け抜けたり、心優しい運転手さんの車に道を譲ってもらったりしている段階です。修行が足りませんね。)
そうやって、道を眺めながらスープを食べていたら、パン屋のおじさんと思しき人が食堂にパンを届けにやって来ました。大きな箱をお店に運び入れた後、追加で2つだけパンを手に持ったおじさん、こう言いながら再びお店に入って来ました。「ジュージュ!」
これで私はハッとしました。
スープを注文する時にお店の人が言っていた「ジュージュ」は2つという意味で、そして私はそれに対して頷いたのだった。ああ、図らずも私はスープを2杯頼んだことになっていたのでした…。
しかし、この店員さんの憎たらしいのは、他の部分はフランス語でやり取りをしていたのにも関わらず、スープの数だけアラビア語、しかもモロッコ方言で言っていたことです。やられた。悔しい。
モロッコに来てから、フランス語だけでなんとかなってしまう環境だったので、つい甘えてしまっていた私もよくなかったですね。アラビア語をもっと勉強しなければ…。
今回のことは、違う種類のスープを出してくれただけよかったと思うことにします。それに、スープは申し分なく美味しくて、結局、完食できてしまったのでした。
2杯飲んでも15ディルハム(170円ほど)という良心的価格ですし、満腹にさせてくれたので、許します。というか、むしろ2杯食べさせてくれてありがとうという気持ちです。
宿に戻ってから、この一連の出来事を宿の女将さん的存在の人に話しました。
すると、「モロッコ方言だと、2の言い方が正則アラビア語と違うのよ~」と教えてくれました。
正則アラビア語だったら、2を何というかは私も知っています。
1「ワーヒドゥواحد」、2「イスナーニاثنان」、3「サラーサثلاثة」…と続くのが正則アラビア語(カタカナで表記するのは少々難しいのですが、便宜上、お許しください)。
でも、モロッコ方言だと、2だけ言い方が違っていて、「ジュージュجوج」というのだそうです。

モロッコ方言の「ジュージュجوج」は、「対、ペア、カップル」という意味を持つ正則アラビア語の「ジャウジュزوج」から来ていて、「1足の靴」と言うときに使うよと、女将さんは例を出しながら説明してくれました。ちなみに、この「ジャウジュزوج」は男性名詞だと「夫」、女性名詞になると「妻」という意味でも使います。
この単語がアラビア語モロッコ方言の2の言い方になっているのです。
モロッコ方言は、正則アラビア語にベルベル語やフランス語など複数の言語の要素が混ざって成り立っています。複雑だけれど豊かな世界が広がっていそうなので、これからじっくり開拓していきたいなと思います。
これから新たな言葉の世界に踏み込んでいくのが楽しみで仕方がない、授業開始前夜なのでした。
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