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「こもれび」が閉まります

  • 執筆者の写真: こもれびスタッフ
    こもれびスタッフ
  • 2021年9月30日
  • 読了時間: 5分

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先日のブログの案内にあった通り、12月末をもって、語学塾こもれびを閉塾することといたしました。


主な理由は、率直に申し上げるなら「厳しい経営状況」です。

コロナ禍のせいにしようとは思いません。この疫禍がなかったとして、今と同じような状況になっていなかったとは言い切れないからです。

しかし、昨年に始まる諸々の冷え込みが、直接的であれ間接的であれ、経営に影響を及ぼしたのは事実です。よってこの度、今後の永続的な運営が困難と判断し、閉塾の運びとなりました。

語学塾「こもれび」という名前は、5年前の発足当時、僕の好きな日本語ということでつけたものです。

各国で話題となったエラ・フランシス・サンダース著『翻訳できない世界のことば』でも紹介されたり、今年芥川賞を受賞された台湾出身の作家、李琴峰さんが「中国語には翻訳できない」という理由で好きな日本語として語っていたり、「木漏れ日」は翻訳不可能な日本語の言葉としてだんだんと市民権を得ているように思われます。

「語学塾こもれび」は、学校のいわゆる科目勉強と外国語学習を「ことば」というトンネルで繋げ、塾でも語学学校でもない、けれどそのどちらでもあるような学びを目指してきました。ここが、その名の示すような何にも翻訳できない場所としてあれたのなら、それ以上の喜びはありません。


しかし「翻訳できなさ」とは取りも直さず「わかりづらさ」でもあります。わかりやすい場所にはしたくないと固持してきましたが、このような小さな場所がこの社会、つまり結果と利益を中心に回る大きな世界の中で居場所を見つけていくことは想像以上に困難なことでした。

ただ、それを「小さな場所」と「大きな世界」の相性のせいにしたくはありません。「小さな場所」でも、信頼や共感や期待をお金に変えることで「大きな世界」の中で生き残っていくことは十分に可能であるし、またそのような場所がひとつでも多い方がいいと思っているからです。

なので「こもれび」がなくなってしまうことは、僕たち自身の力不足と言わなければなりません。


とはいえ、だからこそ、これから続けていくことができない悲しさ以上に、今まで続けてこられたことを嬉しく思います。

外から見たらいまいち何をやっているのかよくわからないような場所が、数は多くなくとも関わってくれた人たちに愛され、教室という空間をもって今まで存続できたことはかけがえのない、そしてまた誇らしい事実です。


それはもちろん、これまで通ってくださった生徒さま、保護者さまのお力添えなくしてはなし得ないことでした。何にも急かされず、必要以上に時間をかけて勉強を楽しむ姿勢は僕のひとつの理想でしたが、年齢を問わず自分のペースを大事にする生徒さんたちのおかげで、それを実現することができました。

また、大人の方も対象としてはいるものの「塾」という名前を冠している以上、やはり中学生、高校生の生徒さんに多く通っていただきましたが、堂々と「受験対策はしない」と言っている塾を頼ってお子さんを通わせてくださった保護者のみなさまには本当に頭が上がりません。


さらに、講師と生徒という関係だけでなく様々な形で外部の方とも関わりを持つことができました。イベントに足を運んでくださったみなさん、またゲストとしてイベントにご登壇くださった方々、だけでなく、ふらっと遊びに来てくれたり、平時こもれびのことを気にかけてくださった多くの方のご助力がありここまで続けてくることができました。 

僕たちの活動に興味を持って、あるいは面白いと思って、期待して、「がんばってください」、「続けてください」と言ってくださったのが何よりも嬉しかったことです。なので、そのような形で応援してくだった方々に対しては感謝を申し上げるのとともに、大変に心苦しい思いです。    


また、この5年間で多くのスタッフに支えられてきました。今も残るメンバーは少ないですが、国分寺への移転前後、節目ごとに魅力的なスタッフに恵まれました。そのうちの誰が欠けても、今のこもれびはありませんでした。この場所を通して関われたこと、一緒にこの場所を形作ってこられたことに感謝します。


そして誰よりも、共同設立者である田邉に、この場を借りて感謝を伝えたいと思います。2016年に編入生同期として東京外国語大学で出会い、その夏、田邉の誘いで二人で始めた小さな教室が今のこもれびの原型です。当時は時間貸しのシェアスペースでの運営でしたが、その後テナントを借り、たくさんの人が集まる教室を作るということは僕一人では決してできなかったことです。立ち上げ当初から、理想を共有できる仲間がいたことは本当に幸福なことでした。


冒頭申し上げました通り、主な閉塾理由としては厳しい経営状況があります。

しかし、それだけであれば、宣伝や授業料の値上げ、あるいはクラウドファンディング等を使って金策を講じることもできたかもしれません。

そうしなかったのは、今が転機だとメンバーそれぞれが判断したからです。

田邊はいま、次の挑戦を前にしています。僕にもこれから生活の変化が訪れようとしています。

「語学塾こもれび」としてはいったん終わりを迎えますが、次へ行くための前向きな決断だと思って、どうかみなさまには、これからも応援賜ることができましたら幸いです。


今日9月30日で、緊急事態宣言が明けるとの発表がありました。

一瞬の無風状態かもしれず、気を抜くことはできません。

しかし、おそらくは12月に最後のイベント「こもれびより」を塾内にて開催する予定です。

その際はぜひ、また足を運んでいただけたら嬉しいです。



語学塾こもれび塾長 志村 響

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